2020年4月7日
緊急経済対策の決定について(談話)
社会民主党幹事長 吉田忠智
1.政府は本日、「GDPの2割に及ぶ、世界的に見ても最大級の経済対策となった」と強調する、事業規模108兆円の緊急経済対策を決定した。しかし、財政出動は39兆円にすぎないし、補正予算案の総額も16兆8057億円にすぎない。納税や社会保険料の支払い猶予、融資枠を積み増して規模を水増ししたが、各国の対策に比べれば全く不十分である。「前例にとらわれることなくあらゆる政策手段を総動員することで思い切った措置」というが、期待外れも甚だしいし、今まさに困っている皆さんを支えるものとはいいがたい「不要不急」の対策が多く盛り込まれており、失望した。
2.「一定の水準まで所得が減少した世帯に対し、1世帯当たり30万円を給付する」というものの、実際の支給対象は限定的であり、ぎりぎりで生活している庶民の実態を理解しておらず、裏切られた思いである。所得が減っていなくても、学校の休校や介護の在宅切り替えなどで出費が増えた家庭の悲鳴は聞こえないのだろうか。個人ではなく世帯に支給することで、世帯主以外の解雇や減収は考慮されないし、1人暮らしも4~5人家族も同じ支給額となり、不公平感が高まる。最も困っている人たちに届く支援が求められるのに、DVなどで避難・別居している被害者にも届かない。自己申告方式は、資料作成と審査の手続きが煩雑になり、国民及び自治体の負担が増え、申告漏れや特殊詐欺の誘発の恐れもある。申請窓口に人があふれる等して、クラスターが起きるとすれば、本末転倒である。
3.新型コロナで困っていない人などほんの一握りであり、国民の大多数が何らかの被害や影響を受けている。「前代未聞の規模の経済対策だ」とどれほど強調されても、支給対象にならない世帯にとっては全く意味がなく、不平不満を招き、国民連帯どころか分断や憎悪、不信感を募らせるだけである。社民党は、選別主義的な現金給付ではなく、普遍主義的な現金給付を求める。安心して休業できるためにも、手間を省き、迅速に対応するためにも、要件を課さずに最低でも一人一律10万円給付などの支援を、政治決断で早期に実行するべきである。そのうえで、子育て世帯、高齢者世帯、障がい者等、事情に応じた上乗せを講じるとともに、住まいから追い出されないための支援、学生の奨学金免除やアルバイトできなくなっている学生が退学にならないようにするための授業料免除などの措置を実施すべきである。
4.フリーランスや個人事業主には最大100万円、中小企業には最大200万円の現金給付を行うというが、具体的な要件な内容が明示されていないし、支給も遅すぎる。「緊急」対策であるにもかかわらず、具体的な記述が少ない。それを隠すかのように、「一刻も早い再起動」、「一気に進める」、「思い切った支援策」、「V字回復のための反転攻勢」、「一気呵成に」など、言葉が踊っているようである。しかも、外出自粛を要請している中、「Go Toキャンペーン」や「国立公園等の自然の魅力を活かした誘客・ワーケーション」、「国土強靱化等に資する公共投資」の推進など、緊急対策にふさわしくない対策が多く盛り込まれている。
5.社民党は、自由にきめ細かく、より地域の実情にあった対応ができるよう、自治体向けの交付金を求めてきた。「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(仮称)」は一定評価するが、まだまだ不十分である。また、新型コロナの影響は全自治体に生じていることから、地方交付税の不交付団体や特別区を含め、必要な財源を措置するべきである。
6.とりわけ保育園や特養等、子どもや高齢者が集団で暮らす施設への配慮が大切であり、そこで働く保育・医療・介護従事者への支援も欠かせない。さらに強化すべきである。
7.「接待を伴う飲食業」や「風俗業」が除外されていることについて、本日、ようやく保護者への休業補償に風俗業従事者も対象に加え、雇用調整助成金も風俗業へ適用することになった。職業や事業を差別することなく、誰もが取り残されないような支援策を迅速に打ち出すべきである。また、厚生労働省が、緊急事態宣言に基づいて営業停止の要請・指示がされた場合、「労働基準法上、不可抗力として休業するものであれば、使用者に休業手当支払い義務は生じないと考えられる」としていたことから、「企業が休業手当を支給しなくてすむ」といった臆測が出ていた。本日、加藤厚労相は、特定の施設の使用が制限された場合の休業手当について「一律に、直ちに支払い義務がなくなるものではない」と述べた。安心して休業要請や外出自粛にこたえられるように、きちんとした対応や他の代替策を明確にすべきである。
8.全世帯に布マスク2枚を配布することも盛り込まれた。マスクを配布するのであれば、医療機関や保育所、学校、介護施設、公共交通機関などに優先して供給するようにすべきである。
9.経済的損失に対する補償がなければ、自粛要請は実効性のあるものとならない。政府は、政府の要請によって生ずる様々な課題に対して、責任を持って対応するべきであり、そのことが感染拡大の防止につながる。政府による自粛要請で生じる損失の補償に関し、「民間事業者や個人の個別の損失を直接補償することは現実的ではない」という姿勢を転換すべきである。社民党は、一人も取り残さないという社民主義の観点から、国民の生活全般に広がる不安と影響を少しでも和らげることを最優先にした支援策の強化を引き続き求めていく。
以上
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