2020年12月2日
種苗法の一部を改正する改正案の成立に抗議する(談話)
社会民主党幹事長 吉田 忠智
1.本日の参議院本会議で、継続審議となっていた種苗法の一部を改正する法律案が与党などの賛成多数で可決され、成立した。社民党は、違法な種苗販売や日本の優良品種の海外流出には種苗法に基づき厳しく対処する一方、農家が購入した種苗から栽培して得た種や苗を次期作に使う「自家増殖」について、これまでの原則容認方針を堅持し、収穫物の一部を自分の経営の範囲内で次の栽培で活用する農業者の権利を守る立場でのぞんできた。共同会派として、衆院農水委に、自家増殖について原則自由を維持するか「育成者権」が及ばない例外品種を設けるよう求め、都道府県の試験場などが持つ種苗生産の知見を民間に提供するよう促す「農業競争力強化支援法」の規定削除を求める修正案を提出したが、与党などの反対で否決されたことから、政府原案にも反対した。
2.種苗法は、新たに開発した農作物品種の保護を目的としているが、法改正のきっかけは、近年相次ぐ日本の農産物の種苗の国外流出である。現地での生産品が格安で流通する事例もあり、不正に歯止めをかけ、国産ブランドを保護していくことの必要性は社民党も否定しない。
3.一方で、最大の焦点は、農家が収穫物の一部を次期作の種苗として使う「自家増殖」を、これまでの「原則自由」から「原則禁止」に変え、育成権者の許諾なしに使えないようにする点であった。「自家増殖」は、コストを抑える意味からも、農業者が長年、続けてきた根幹の技術で、それが損なわれれば、現場の生産意欲を削ぎ、特に小規模農家の経営を圧迫する懸念がある。
4.現行法でも、登録品種を増殖しての第三者への譲渡は禁止されており、種苗の無断流出の規制には刑事告訴や、海外でその国の法令に則り育種登録することなどで、一定の対処は可能である。また、たとえ許諾制を導入するとしても、品目一律ではなく例外規定を設け、コメなど主要作物は対象外とするとともに、小規模農家は許諾免除とするなど、地域農業を守る視点が欠かせないが、改正案にはそうした配慮がないものであった。
5.許諾制が盛り込まれれば、それに関する事務手続や費用負担の増加などが見込まれ、海外の大手種苗メーカーが生産した種子を日本国内で品種登録して、高額な許諾料を設定することで、中小農家の経営を圧迫する恐れがある。さらに潤沢な登録料を支払うことのできる特定の民間企業による、種子の独占や市場の寡占化が進めば、種子の多様性が失われ、農家や消費者の選択肢を制限することにもなる。
6.2017年に、都道府県など公的機関が有する「種苗の生産に関する知見」を多国籍企業も含む民間企業に提供するよう求めた農業競争力強化支援法が施行済みである。18年には、主要農産物種子法が廃止されており、さらに今回の法改正で自家増殖禁止となれば、安価で優良な種を供給する公的種苗事業が根底から揺らぎ、地域農業にも深刻な影を落としかねない。その意味で共同会派の提出した修正案は、最大の懸念である「自家増殖」について、原則自由を維持するか「育成者権」が及ばない例外品種を設けるとしており、評価できるが、与党などにより否決された。社民党は、多くの農業者や市民とともに、今回の法改正に抗議するとともに、地域農業や農家、消費者の権利を守り、安定した農作物・食料を確保するため、全力で取り組んでいく。
以上
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