消費税率の10%への引き上げが迫る。政府はまだ「予定」としているが、さまざまな課題を置き去りにした税率引き上げは許されない。参院選において野党は市民連合と政策合意を行ない、「予定されている消費税率引き上げを中止し、所得、資産、法人の各分野における総合的な税制の公平化を図ること」が重要だと訴えてきた。しかし選挙で与党が過半数を占めたことで、政府は引き上げが認められたとばかりにだんまりを決め込んできた。この間一切、疑問や論点には触れず、臨時国会の早期開催要求にも応じなかった。今日もなお世論は引き上げには反対という意見が多数であり、税率引き上げは中止すべきだ。
消費税の引き上げ時期と税率については知られているが、その内容や関連する施策について国民の理解は進んでいない。今月に入り新聞各紙やワイドショーは相次ぎ消費税の特集を組んでいる。消費者も「賢くなろう」「利口になろう」「得をしよう」というわけである。小売店などの中小事業者もレジの更新など手つかずというケースも多く、対応、対策、準備が進んでいないのが現実だという。軽減税率をとっても、この商品がなぜ10%となり、またなぜ8%のままなのか、現場の混乱が心配されている。売り方、買い方によって税率が異なり、理解するには難解で複雑な説明が必要となる。このままでは消費者は「言われるまま」、事業者は「答えられないまま」引き上げられることは明白だ。
「キャッシュレス社会」と聞いたお年寄りが「お金がない貧乏人でもちゃんと暮らせる世の中になるのか」と聞き返したという笑えない話がある。政府はポイント還元制度を「増税対策」と説明しているが、クレジットカードやスマホ、電子マネーなどを利用したキャッシュレス決済を普及させることが本来の目的だ。しかも適用が9ヵ月間に限定され、事務の煩雑さも手伝い、中小事業者の制度導入(申請を含む)も少ない。またクレジットカードを持てる層は限られ、高齢者などの低所得者は実質的に新たな負担を強いられることになる。さらに制度を悪用した「ポイント還元」詐欺が心配され、高齢者が被害者となる危険も指摘される。
臨時国会は来月召集に先送りされ、消費税については議論もなく淡々と進められてきた。閉会中審査として予算委員会、財政金融委員会などを開き議論すべきだ。私たちは税率引き上げの中止を求める。このまま疑問や課題を置き去りにし見切り発車することは許されない。
(社会新報2019年9月11日号・主張より)
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