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検察官の恣意的な定年延長のための検察庁法一部改正案の成立断念について(談話)

2020年5月18日


検察官の恣意的な定年延長のための検察庁法一部改正案の成立断念について(談話)


社会民主党幹事長 吉田忠智


1.検察官の恣意的な定年延長を内容とする検察庁法改正案について、本日、安倍首相は、「国民の理解なくして前に進むことはできない」として、今国会での成立を断念した。「#検察庁法改正案に抗議します」のツイッターが1000万件を超えるなど、多くの国民が声を上げ、日弁連や元検事総長を含む検察OBも法改正に反対の意見書を提出するなど、反対の声が広がりを見せていた。成立断念自体は当然であり、採決を押しとどめることができたのは、「これだけは黙って見過ごせない」との思いで、短期間に新しい手法で声を上げた多くの国民の力によるところが大きい。

2.現在63歳の検察官の定年(検事総長は65歳)を段階的に65歳に引き上げ、あわせて役職定年を導入すること自体に異論は無い。しかし、検察庁法改正案は、内閣や法相の判断で、役職定年の延長(役降りの特例)や延長された後の定年自体を延長する(勤務延長の特例)ことを可能にするものであり、政権にとって都合の良い幹部だけをポストにとどめられるなど、恣意的な運用ができるものとなっている。しかも法の運用を決定付ける肝心な部分であるのに、内閣や法相の判断の基準である「内閣の定める事由」や「法務大臣が定める準則で定める事由」の内容は抽象的で、どういう内容になるか決まっておらず、政府に白紙委任するに等しいものであった。まさに黒川東京高検検事長の定年延長を、後付けで追認・正当化する性格のもので、今後、内閣・法相が人事に介入し、個々の検察官を審査し、厚遇も冷遇もできる仕組みは、「準司法官」である検察の独立性や政治的中立性を脅かし、政権の意のままになる検察づくりにつながり、三権分立に反しかねない。

3.法務省は、日中戦争が勃発した1937年に治安維持法とともに改悪され、司法大臣の裁量で定年を延長することができるとされた、戦前の裁判所構成法を持ち出し、検察官の恣意的な定年延長を根拠づけている。しかし同法は、人権保障と適正手続き、司法権の独立を定めた日本国憲法の施行によって廃止され、検察庁法で検察官は63歳定年と定め、81年の国公法改正による定年年齢も検察官には適用されないとしてきた。これは、戦前の刑事手続きでの弾圧や人権侵害への反省からである。こうした経緯を踏みにじる今回の法改正は、司法の民主化に逆行し、戦前に戻すに等しいものであった。

4.政府も国会も全力をあげて取り組むべき最大の課題は、新型コロナウイルス感染症から、国民の命と暮らしを守ることである。火事場泥棒的に、森友や加計問題、桜を見る会、河井前法相疑惑等を葬り去り、巨悪を眠らせようとするだけでなく、国策捜査や強権的な弾圧を容易にするような法案を、短時間の審議で強行しようというのは、断じて許されない。社民党など共同会派と共産党は、検察官人事への恣意的な介入を可能にする検察庁法改正部分を入れ込んだ第4条の分離・撤回を求めるとともに、武田良太国務大臣の不信任決議案を提出するなど、徹底抗戦の姿勢で臨んできた。

5.検察庁法一部改正案の成立断念は、良識ある国民の声と野党が一緒になって政治を動かした成果である。しかし、検察庁法改正案を分離せず、一般の国家公務員の定年年齢の段階的引き上げなどもあわせて継続審議とするのは、次期国会以降に問題を先送りするに等しい。「束ね法案」から、問題の検察庁法改正案を分離し、野党も賛同している定年延長部分と切り分けて取り運ぶべきよう求める。社民党は、引き続き多くの国民の皆さんとともに、検察官の恣意的な定年延長を許さない立場で全力をあげる。


以上




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