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暮らしの安心にほど遠い、防衛費膨張の2020年度政府予算案の決定について(談話)

2019年12月20日


暮らしの安心にほど遠い、防衛費膨張の2020年度政府予算案の決定について(談話)

社会民主党幹事長 吉川はじめ


1.政府は本日の閣議で、2020年度予算案を決定した。一般歳出総額は102兆6580億円と8年連続で過去最高を更新した。12月13日に決定した今年度補正予算案と次年度当初予算案をあわせて編成する、事実上8年連続の「15か月予算」となっている。「令和最初の予算編成」と意気込んだが、「戦争できる国」を目指す安倍政権らしく、防衛関係費が19年度補正予算案では過去最大の4287億円、20年度当初予算においても過去最大の5兆3000億円を計上し、膨張に歯止めがかからない。また、税収が63兆5130億円で過去最高と言うものの、その内実は、消費税増税による増収分が大半である。消費税増税分を除けば、所得税・法人税の増収分はリーマンショックから回復している程度にすぎない。社民党は、こうした消費税に依存する「不公平税制」からの抜本改革を求めるとともに、「軍事化する予算」を許さず、アベノミクスの生み出す正社員と非正規社員の格差、大企業と中小企業の格差、都市と地方の格差拡大などを食い止める「社会を底上げする予算」への転換を求めていく。


2.防衛関係費は、19年度当初比559億円増の5兆3133億円となり、8年連続で増え、6年連続で過去最高を更新した。戦闘機F2の後継機の開発費111億円が初めて計上され、また海上自衛隊の中東派遣に関する護衛艦の燃料費や人件費や、護衛艦いずもの空母改修費なども含まれる。米国との対外有償軍事援助FMSにより、最新鋭ステルス戦闘機F35Bやイージス艦搭載システムなどを購入するため、さらに膨らんだ後年度負担の残高は今年度予算額を超える水準である。「専守防衛」の枠を越える防衛力整備には断固反対する。また、財政法29条で、突発的な災害対応など、予算作成後に生じた特に緊要となった経費の支出のためと規定しているが、19年度補正予算案では、当初予算から「前倒し計上」された地対空誘導弾パトリオットミサイルPAC3の改修費や、新型主力輸送機C2などの整備費など、一度の補正予算としては過去最高の4287億円となっている。「15か月予算」では、補正予算を利用し、次年度予算の事業を「前倒し計上」が常態化しているが、査定が甘く「第2の財布」と化している補正予算でも防衛費を膨張させていく姿勢は断じて容認できない。


3.社会保障費は、過去最高を更新し、35兆8121億円となった。医療、介護や幼児教育・保育の無償化関連の費用が増え、前年度当初より1兆7495億円増えた。高齢化や医療の高度化に伴う社会保障費の増加幅(自然増)は、概算要求段階で5353億円としていたが、この伸びを4111億円に抑えた。診療報酬は薬価の引き下げにより全体で0.46%マイナスとすることなどにより抑制した形だ。安倍政権の進める全世代型社会保障改革は結局、全世代にわたる社会保障の負担増と給付削減に他ならず、国民生活の実態を無視したやり方は許されない。


4.高等教育の修学支援制度が20年4月から開始されるため、4882憶円が計上された。低所得世帯の大学生らを対象に授業料・入学金の減免や給付型奨学金の拡充がなされるが、高等教育の無償化は国際公約でもあり、対象、規模ともまったく不十分だ。


5.沖縄振興予算は、内閣府が3190億円を概算要求していたが、3010億円となり3年連続で同額とされた。その一方で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設事業を含む米軍再編関係経費は、1937億円が計上された。辺野古新基地建設に反対する県民の民意を無視する安倍政権の姿勢は許されず、厳しく非難する。


6.農林水産予算は、19年度補正予算案で5849億円、20年度本予算案は消費増税対策の「臨時・特別の措置」と合計で2兆4117億円を計上するが、その中身は輸出力のある和牛増産への支援や農地の大区画化、AIなどの先端技術導入のための予算など、投資を後押しして生産性を高める「攻め」の政策ばかりが大手を振っている印象が拭えない。承認が強行された日米貿易協定が来年1月1日に発効予定でTPP、日欧EPAと合わせかつてない市場開放時代を目前に、収入減で経営維持が困難な農業者が増える恐れがある中、国内の生産基盤を守るため家族農家や中山間地域を含めて農家の所得維持対策がこれまで以上に求められるが、そうした目配りに全く欠けた予算案は厳しい批判を免れない。


7.復興庁所管の20年度予算案は1兆4024億円と過去最少だった19年度予算をさらに下回り安倍政権の被災地軽視を改めて示している上、復興期間終了後の21年度以降の復興事業縮小への懸念もさらに膨らませるものとなった。昨日閣議決定された復興基本方針では、21年度から5年間の事業費は1兆円台半ばと一気に縮小、被災地のまちづくりを支えてきた復興交付金も廃止する方針だが、未曾有の大震災からの復興は期間を区切って終わるものではなく、安倍政権の一方的な判断で被災地の経済と暮らしの下支えを打ち切ることは許されない。社民党は柔軟で息の長い国の支援継続・拡充を強く求めるとともに、切れ目のない復興政策に今後も国が責任を持つよう安倍政権に訴えていく。


8.東京電力福島第1原発事故に関する予算は、「特定復興再生拠点区域」整備に673億円、「福島再生加速化交付金」に791億円を計上した。帰還困難区域を含む被災地の一刻も早い復興は極めて重要だが、帰還の強制につながってはならず、居住・避難・帰還のいずれの選択においても原発事故被害者の意思を尊重し国の十分な支援を定めた「子ども・被災者支援法」の理念を踏まえた対応を安倍政権に重ねて要求する。また除染で生じた汚染土などを保管する中間貯蔵施設の整備費は前年比1・9倍となる4025億円を計上したが「30年以内に福島県外で最終処分」との約束をどのように果たすつもりか、その明確な道筋を一刻も早く示すよう強く求める。


9.公共事業関係費(通常分)は、73億円増の6兆596億円となり、0.1%増となった(通常分と「臨時・特別の措置」を合計すれば、528億円減の6兆8571億円、0.8%減)。防災・減災、老朽インフラ対策、既存ストックの活用は必要であるが、大都市圏環状道路等の整備、都市の国際競争力の強化のための大規模都市開発プロジェクトや広域連携等の推進などが目白押しである。また、経済成長や生産性、競争力、ビジネスの機会拡大・効率化や新ビジネスの創出などにウエイトが置かれている。整備新幹線には、12億円上積みして804億円を盛り込み、2年連続の増額となり、全体の事業費は今年度より467億円多い4430億円となる。一方、「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの形成、利便性が高く持続可能な地域公共交通ネットワークの実現、バリアフリー化などはまだまだ不十分である。


10.地方交付税は、入口ベースは575億円増の15兆6085億円にとどまったものの、出口ベースでは4073億円増の16兆5882億円となり、2年連続の増額となった。自由に使える一般財源総額も、7246億円増の63兆4318億円(1.2%増)で過去最高を更新した。河川等の浚渫を推進するための「緊急浚渫推進事業費」の計上や、人口減少や高齢化、インフラ老朽化などの対策の強化は、一定評価しうる。社民党が求めていた会計年度任用職員制度の施行に伴う期末手当の支給等に係る経費が一般行政経費(単独)等に計上された。一方、財源不足を補う臨時財政対策債(赤字地方債)は、3兆1000億円となり、20年度末の発行残高は53兆3000億円となった。発行額は3年連続で縮減し、1000億円圧縮し、残高を5000億円減としたものの、総務省調査では、25の道府県で、事実上返済資金の積み立てが不足している状態になっている。このままでは財政を圧迫し、住民生活に影響が出かねない。交付税率の引き上げなど、地方交付税の財源不足への対策を行い、臨時財政対策債を早期に解消する必要がある。


11.マイナンバーカードを活用した消費活性化策2458億円や今後のマイナンバーカードの交付枚数の想定を踏まえたカード申請の増加等に対応する市町村等の体制整備1365億円、医療機関におけるマイナンバーカードの健康保険証としての利用を促進のための768億円など、無理矢理マイナンバーカードを普及させようという姿勢が露骨である。巨額の費用をかけながら、「マイナポータル」のサーバーやハローワークと他の公的機関をつなぐサーバーの利用率は極めて低水準であるなど、IT利権と化すだけで費用対効果の見られないマイナンバー制度関連システム自体見直すべきだ。


以上




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