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執筆者の写真sdpkyoto

日米貿易交渉の基本合意について(談話)

2019年8月26日




社会民主党幹事長 吉川はじめ


1.安倍首相は25日、フランスのビアリッツでトランプ米大統領と会談を行い、日米貿易交渉について基本合意に至り、9月下旬の国連総会に合わせた日米首脳会談で米国との貿易協定の署名を目指すことで一致したと発表した。自動車など日本の工業製品を守るためとはいえ、これ以上、国内農業を犠牲にすることは許されない。社民党は無軌道な市場開放を阻止する立場から、今回の暴挙に対し厳しく抗議するとともに、大枠合意を直ちに破棄するよう安倍政権に強く要求する。

2.米側が求めた米国産牛肉・豚肉の市場開放に関し、環太平洋連携協定(TPP)の水準を上限とすることになった。しかし、そもそもTPPの合意水準自体が農産物重要5項目の関税堅持という国会決議に違反しているものである。そのうえ、農林水産業をめぐっては既に米国を除く11か国の「TPP11」とEUとの日欧EPAが発効し、かつてない自由化に直面しており、米国との間でそれらと匹敵する水準の市場開放となれば、日本農業への壊滅的打撃は不可避となり、37%と過去最低に並んだ食料自給率がさらに下落する恐れがある。その悪影響は農林水産業にとどまらず地域経済にも広く及びかねない。

3.コメについて、TPPで設けた7万トンの無関税輸入枠の導入を見送り、再協議する方向となった。日本政府は輸入枠の引き下げを求めるというが、アメリカのもともとの要求は17・5万トンであり、USAライス連合会の昨年12月の要求は15万トン、アメリカ農務省の皮算用は33万トン増とも言われており、押し切られないか懸念が強く残る。また、トランプ大統領の要請に基づき、安倍首相は米国産トウモロコシを購入することでも合意した。対中貿易摩擦で中国への輸出が伸び悩んでいる中でのアメリカへの譲歩だが、米国産トウモロコシは全作付面積の9割以上が遺伝子組み換えであり、安全性の面からも看過できない。

4.日本側が求めていた工業品の関税引き下げでは、自動車本体の関税撤廃は見送られることが決まり、今後も協議を続けることになった。当面、日本から米国に輸出される自動車への関税は維持されることになり、TPPよりも後退したといえる。また、米国による自動車輸入の数量規制や自動車への追加関税について、対日貿易赤字の削減を求めているトランプ米大統領が今後、一層の譲歩を求めてくる可能性もある。

5.昨年の日米合意では、「物品、またサービスを含むその他重要分野における日米貿易協定」とあり、「協定の議論が完了した後、貿易および投資に関する他の項目についても交渉を開始する」とされている。ペンス副大統領も「日本と歴史的な二国間のFTA交渉」と宣言しており、事実上の日米FTAの拙速な交渉は、国民生活の隅々にまで多大な影響を及ぼす懸念があり、禍根を残す。

6.コメの無関税枠や自動車関税、牛肉のセーフガードのTPP11との調整など、課題は残されており、予断を許さない。何よりも政府はこれまでの経過を全く情報公開しておらず、このまま交渉を進めることは許されない。交渉内容や「大枠合意」の具体の中身の公開、影響試算、今後の対処方針を明らかにするよう強く求めるとともに、予算委員会や農林水産委員会における閉会中審査を求めていく。


以上

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