2020年9月11日
新たな安全保障政策に関する安倍首相の談話について(談話)
社会民主党幹事長 吉田忠智
1.本日、政府は、国家安全保障会議(NSC)を経て、新たな安全保障政策に関する安倍首相の談話を発表した。「病気と治療を抱え、体力が万全でないという苦痛の中、大切な政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはなりません」として退陣を表明した首相が、総裁交代のどさくさに紛れるようにして、平和主義や戦争放棄という憲法の理念に背き、戦後曲がりなりにも建前として堅持してきた「専守防衛」や「必要最小限度の実力」すらかなぐり捨てる暴挙をすすめようとすることは、断じて看過できない。
2.談話は、「抑止力を強化するため、ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針を検討してまいりました」として、「攻撃」という言葉を使わずに、あくまでも弾道ミサイルの「阻止」が目的であるとしている。8月4日に提出された自民党提言の「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有を含めて、抑止力を向上させるための新たな取組が必要である」を踏まえたものであり、「抑止力」であるとか、「ミサイル阻止」であるとか、相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力というが、ミサイルの撃破を目的として相手領域内に乗り込む兵器を、「攻撃」的兵器ではないと言い張るのは無理があり、事実上の敵基地攻撃能力を包含したものにほかならない。
3.「ミサイル阻止」の検討について、「憲法の範囲内において、国際法を遵守しつつ、行われているものであり、専守防衛の考え方については、いささかの変更もありません。また、日米の基本的な役割分担を変えることもありません」と強調している。しかし、敵基地攻撃は、何をもって日本への「攻撃の着手」と判断するのかの見極めは難しく、国連憲章や国際法に違反する「先制攻撃」にもなりかねない。「専守防衛」を逸脱し、憲法上も許されない敵基地攻撃能力の保有を、言葉遊びをしながらなし崩しで認めようとしているのは決して許されない。安倍首相は、突然停止されたイージス・アショア計画の経緯と費用などをこそ明らかにすべきである。
4.今後、「与党ともしっかり協議しながら、今年末までにあるべき方策を示し、わが国を取り巻く厳しい安全保障環境に対応していくこととする」としているが、日本世論調査会の全国郵送世論調査では、自衛隊は「専守防衛を厳守するべきだ」と答えた人は76%にのぼる。事実上の敵基地攻撃能力の保有は、周辺国の緊張を不必要に高め、北東アジアの軍事緊張も激化させかねない。社民党は、憲法を逸脱する敵基地攻撃能力保有の検討を断念するよう強く求める。
以上
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