2020年11月8日
アメリカ大統領選挙の結果について(談話)
社会民主党幹事長 吉田忠智
1.激戦が続き、大接戦となったアメリカ大統領選挙は、民主党のジョー・バイデン候補が勝利に必要な選挙人(270人)を超える人数を獲得する情勢となり、共和党の現職大統領ドナルド・トランプ候補を下し当選が確実になった。バイデン氏の下で、トランプ政権が深めた「分断社会」が緩和されていくよう願っている。一方、「Keep America Great!(米国を偉大なままに!)」を強調したトランプ氏は、郵便投票で不正が起きている、違法性のある票は無効にすべきだなどと主張し、法廷で徹底的に戦う構えを見せているが、アメリカの民主主義自体を疑い、アメリカ社会の分断と混乱をさらに深めるような対応は残念である。
2.今回の大統領選挙では、新型コロナ対策や経済政策、そして人種差別・不平等問題が大きな争点となった。トランプ政権は、新型コロナを軽視してきたが、アメリカでは、新型コロナによる死者が世界で最も多くなり、生命と健康、そして経済の被害に直面し、新型コロナ対策や医療政策、経済政策などが影響した。トランプ氏は、前回、躍進の象徴となった「ラストベルト」で底堅い支持を見せつけたが、大恐慌以来最悪の経済危機にあるとして、製造業の支援に7000億米ドルを投入し、500万人の雇用を創出すると訴えるなど、雇用や産業の再生を強調したバイデン氏に及ばなかった。また、トランプ氏は、排外主義をあおり、強硬な移民政策の維持を掲げるとともに、白人警官によって黒人男性の命が奪われた事件を受けて全米に広がった、「Black Lives Matter(BLM)」運動などに対し、「法と秩序」を合言葉として法執行機関を強力に支持すると強調し、構造的な人種差別の問題に背を向けてきた。さらにトランプ政権は、「アメリカ・ファースト」を掲げ、「パリ協定」離脱、INF全廃条約離脱、イラン核合意破棄、世界保健機関(WHO)脱退など、国際社会からの孤立を深めてきた。バイデン氏の下で、アメリカ社会の抱える深刻な矛盾を解決していくとともに、国際社会へ復帰し、適切な役割と責任を果たしていくことが期待される。
3.トランプ大統領との蜜月関係を強調した安倍前政権の下で、農業を犠牲にし日本車と部品の関税撤廃・削減分の先送りなど一方的な譲歩を強いられた日米貿易協定、対外有償軍事援助(FMS)による米軍兵器の「爆買い」やイージス・アショアの導入など、対米追従が極まった。在日米軍の駐留経費負担(思いやり予算)についても、日本に対し現行から5倍の増額を求め、エスパー米国防長官からは、防衛費自体のGDP比2%以上への引き上げ要求を突きつけられている。
4.一方、バイデン氏は、気候変動に懐疑的だったトランプ氏とは異なり、エネルギー政策の転換を強調しており、「グリーン・ニューディール」の方向性が強まることになろう。巨額の経済対策による景気への期待がある一方、経済政策などで日本への風当たりが強まることも懸念される。また、バイデン氏は、新型コロナ対策や米国内の福祉・雇用政策を重視するため、軍事費を抑制していくとみられており、在日米軍の駐留経費負担協議が本格化する中で、相応の協力や負担を求められることを警戒したい。
5.沖縄県民はじめ、基地周辺住民は「日米同盟」の犠牲になってきた。辺野古新基地建設の強行、オスプレイ配備、爆音や事故・事件の続発など、課題は山積している。アメリカに対し、普天間基地の全面返還、辺野古新基地建設の中止、基地負担の軽減や日米地位協定の全面改正を強く求めていかなければならない。日米関係は重要であるが、アメリカの世界的な軍事戦略に日本が従属するのではなく、平和憲法を外交政策の柱に据え、毅然とした姿勢のもとで、主体的で対等な日米関係を目指していく。
以上
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