「アジアで住みやすい都市1位」の大阪市の廃止に反対です
2020.10.16
「大阪都構想」について
「大阪市」がなくなるだけで「大阪都」はできません 10月12日、いわゆる「大阪都構想」の2度目の住民投票が告示されました。11月1日に投開票が実施されます。「大阪都構想」といいますが、今回の住民投票は、「大阪都」を実現するか否かではなく、あくまでも大都市地域特別区設置法に基づく、「大阪市を廃止し特別区を設置することについての住民投票」です。 歴史と伝統ある大阪市の財源と、産業政策や大規模なインフラ整備など広域行政の権限を府に召し上げ、市そのものを廃止し、4つの特別区に分割するかどうかを決めるものです。しかも大阪市が廃止されることになっても、大阪府が「大阪都」になるわけではありません。都とみなされるのは法制度上のことで、名前は「大阪府」のままです。
分権・自治に逆行する「大阪都構想」 いわゆる「大阪都構想」では、「ニア・イズ・ベター」として、大阪市の基礎的な仕事が住民に近くなる分権的な面ばかり強調されています。しかし、住民投票で決定すれば、「憲法上の地方公共団体」である市が廃止され、権限及び財源の制限された「憲法上の地方公共団体でない」特別地方公共団体である特別区に分割される初めての例となります。特別区は、独自の議会を持ち、公選の区長を擁するが、法律によって、「基礎的な地方公共団体である市町村に準ずる権能を有するもの」と位置づけられるにすぎません。特別区の権限・財源は、政令市とはほど遠いものです。住民の自治権の後退であり、市の自治権を府が奪う集権化にほかなりません。 東京市と東京府が統合し東京都が誕生した経緯や、東京23区が都の内部団体からの脱却と基礎自治体化を求めてきた歩みを考えれば、分権・自治の流れに逆行するものです。1889年、大阪府下4区が大阪市となりましたが、内務省が任命した府知事が職務を執行しており、市庁が府庁から独立したのは98年のことです。投票の結果如何で、府下4区の時代に戻ってしまうことになります。
心配される市民の負担増と市民サービスの後退 府と特別区の間での事務再配分により、まちづくりの権限も一般市以下となり、大都市自治体としての総合的政策が展開できにくくなります。 現行の区役所はなくならないといいますが、法的には地域自治区の事務所にすぎません。新淀川区では区の職員8割が、新天王寺区でも5割が中之島の合同庁舎に間借りし、区役所が区内にないといってもいい異常事態です。市民の声や要望は届きにくくなるのは必至です。 「二重行政をなくしムダを省いた」結果、コロナと戦う市民病院や環境科学研究所が廃止されました。府と市がそれぞれやることは、「二重行政」ではなく、住民のニーズに応えた多様性です。100を超える一部事務組合の設置などで、かえって「三重行政」が生じます。 税収も約7割が府に吸い上げられ、府からの交付金に頼らざるをえなくなります。しかもコロナの影響で、市の税収は500億円近く減少しています。また、市を特別区に分割して増える経費について、国は保障しないことにしており、地方交付税の基準財政需要額の水準は切り下げられます。地方制度調査会専門委員会では、「大阪市民があえて茨の道を行く」、「特別区になった結果、より厳しい財政事情に追い込まれる」という声も出ていました。 議会や教育委員会を各特別区につくるコストが増えるのに加え、庁舎整備費やシステム改修などもかかります。コロナ禍の中で、市民のための仕事の上に、膨大な事務作業も強いられることになります。 財政試算では、スポーツセンター、老人福祉センター、子育てプラザといった施設の削減が盛り込まれています。水道料金の値上げや敬老パスの廃止、子ども医療費の助成などの大阪市独自の政策が維持できるのかも心配です。 こうしたことが全て大阪市民にしわ寄せされ、市民の負担が増える上に、市民サービスが維持できなくなることが懸念されます。
まだ、まにあいます、「大阪市」の廃止を阻止しましょう 大阪府は47都道府県の幸福度ランキングで最下位であった一方、大阪市はアジアで住みやすい都市1位にも選ばれたことがあります。「大阪都構想」は大阪府の性格を変え、大阪府民全般に関係する問題です。しかも堺市などは、今後、住民投票なしで市の廃止と特別区への移行を決めることができるようになってしまいます。大阪市域だけの投票では不十分です。 「大阪都構想」 は、大企業のための成長戦略を進め、都市間競争に勝ち抜く街に育てるという、効率化・競争力強化のための再編であり、住民の暮らしや自治を豊かにすることにはつながりません。一度大阪市を廃止すれば、二度と元には戻れません。 社民党は、市民の暮らしを守るため、分権・自治に逆行する「大阪都構想」ではなく、大阪市の廃止・解体の阻止に全力をあげます。
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